バイリンガル子育てをするのはなぜでしょうか?
家族間のコミュニケーションのため? それとも、お子さんの将来を見すえて?
理由は人それぞれでしょう。しかし、バイリンガルに育った子どもに共通して見られる強みがあります。
それは、「複数の視点から物事を考える力」です。
異文化を身近にすることで馬かられる「多面的視点」は、グローバル社会を生き抜くための重要な能力となります。
日本でも、文部科学省が国際バカロレア(IB)教育の普及を推進するなど、グローバル人材育成に力を入れています。
IBは、インターナショナルスクールだけのものと思われがちですが、少しずつ日本の私立や公立の一条校にも展開されています。
この記事では、国際バカロレアのどのような点が「グローバル教育」と言われる所以をひもといていきます。
グローバル教育ってなに?
グローバル教育とは

「グローバル教育」という言葉はよく聴くようになりましたが、具体的にどのような教育を指すのでしょうか?
欧州では2002年の「マーストリヒト・グローバル教育会議」において次のように定義されました。
「グローバル教育とは、人々の目を世界の現実に向け、万人にとってより公正で、平等で、かつ人権が保障される世界の構築を目指して行動を喚起する教育であり、それは開発教育、人権教育、 持続発展教育、平和・紛争解決教育、異文化教育などを包含するものであると理解できる。つまり、市民教育のグローバルな次元のものであると言える。」
この定義からも分かるように、相互依存の理解や多文化理解など、現代に欲しい力を育む教育として世界的に受け入れられています。
日本のグローバル教育プログラム
では、政府が推進する日本のグローバル教育も見てみましょう。
2010年「グローバル人材育成推進会議」が設立され、次のような人材を「グローバル人材」と定義しています。
1. 語学力・コミュニケーション能力
2. 主体性・積極性、チャレンジ精神、協調性・柔軟性、責任感・使命感
3. 異文化理解と日本人のアイデンティティ
これらを目指して、国家レベルで多数のプログラムが動いています。
スーパーグローバル大学創成支援事業
大学改革と国際化を推し進め、国際通用性、国際競争力の強化に取り組む大学を財政的に支援する事業です。世界トップ水準の大学との交流にも取り組んでいます。2019年時点で、37の大学が選ばれています。
スーパーグローバルハイスクール事業
語学力や参加・体験型授業を強化し、国際的に活躍できるグローバル・リーダーの育成を図ることを目的とした事業です。スーパーグローバルハイスクールは、目指すべきグローバル人物像を設定し、国際化を進める国内外の大学を中心に、企業、国際機関等と連携を図り、グローバルな社会課題、ビジネス課題をテーマに横断的・総合的な学習、探究的な学習を行います。2019年現在で指定された高校は全国に123校あります。
トビタテ!留学JAPAN
意欲と能力ある日本の若者の海外留学を後押しする留学促進キャンペーンです。民間企業からの支援や寄付をもとに官民協働で「グローバル人材育成コミュティ」を形成し、将来世界で活躍できるグローバル人材を育成しようとしています。
文部科学省IB教育推進コンソーシアム
グローバル人材育成の観点から、日本国内の国際バカロレア(IB:International Baccalaureate)の普及・拡大を推進しています。2018年に文部科学省IB教育推進コンソーシアムが立ち上がり、2020年までに認定校200校を目標としています。2019年11月の時点で、国際バカロレア認定校等数は76校。
海外の教育機関との連携、留学促進、世界横断型の教育システムの導入など、世界で活躍するグローバル人材を育てるための様々な取り組みが国レベルでなされていますね。
国際バカロレアはなぜ注目されているのか?

国際バカロレアはなぜ始まった?
文部科学省も推進する国際バカロレア(IB)とは、1968年にスイス・ジュネーブのインターナショナルスクールで始まった教育プログラムです。
当初は国際機関で働く駐在員の子どもたちが、どこの国でも通用する大学進学資格を得られるようにと設計されました。
現在では、世界150か国以上、約5,000校で採用されており、世界的な教育スタンダードの一つとなっています。
探究型・教科横断型の学び
IBの理念は、「多様な文化への理解と尊重を重視し、平和な世界の実現に貢献する思いやりある若者の育成」です。
そのために、次の4つのプログラムが提供されています:
◉ プライマリー・イヤーズ・プログラム(PYP)3歳〜12歳
◉ ミドル・イヤーズ・プログラム(MYP)11歳〜16歳
◉ ディプロマ・プログラム(DP)16歳〜19歳
◉ キャリアプログラム(IBCP)16歳〜19歳
また、国際バカロレアには、目指す10の学習者像が示されています。

10の項目を学びの基盤として探究心・知識・思いやり・考える力などの育成が重視されています。面白いのは、Unit of Inquiry(探究ユニット)という授業があることでしょうか。
我が家の娘が通う学校はPYPを導入しています。たとえば「Celebrations around the world」という探究ユニットでは、世界各国の祝日について学び、宗教・文化・歴史にまたがる多角的な視点で授業が展開されました。折り鶴やアンネ・フランクの話なども含まれており、子どもたちは自発的に学びを深めています。
教科を横断した探究型の学びにより、学習の定着率が高く、知識が多方面に広がっていく実感があります。
国際バカロレアはインターナショナルスクールだけじゃない
2013年からは、DP(高校相当)の一部科目を日本語でも履修できるようになり、認定された一条校でもIBを学ぶことが可能になりました。
全国で39校(2019年時点)の一条校がIB認定を受けており、より多くの子どもたちがIB教育に触れられる環境が整いつつあります。
まとめ
語学力・主体性・柔軟性・異文化理解といった力を備えた人材が、今後ますます求められます。
従来の一方向的な知識詰め込み型教育では育てにくいこれらの力を、IBは体系的に育むことを目指しています。
国際的に活躍できる子どもを育てたいと考えているご家庭にとって、IBは非常に有効な選択肢のひとつになるはずです。
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