ホームページリニューアル中

もしも…言葉を混ぜて話し出したら?

バイリンガルキッズ

「はよよー」
「バンダンダ!」

ひじりママ
ひじりママ

娘が2歳前のとき、こんな単語を発していました。さて、どういう意味でしょう?笑

「はよよー」→「おはよう」
「バンダンダ」→「バナナ」

彼女のなりに、一生懸命お話ししようとしているんだなぁと感じたものです。3歳の頃はこんなイタリア語の間違いもしていました。「Sono esciuta(私は出かけました)」正しくはSono uscitaです。Uscire(出る/出かける)という動詞の現在形一人称の活用は「Esco」なので、不規則動詞活用をまだ理解していなかった娘は過去形風に発言していたのでした。つい最近は、こんな会話もありました。「ママー!このpoem(詩)、rima(韻を踏む)なんだよ!」大集合です。

出るは出るは変てこりんな言葉の使い回し。挙げ句の果てには言葉のチャンポン。

うちの娘はきちんと言葉を学べていないのでしょうか?
バイリンガル子育て、間違ってしまったのかな?

今日はこんな疑問を掘り下げてみたいと思います!

スポンサーリンク

言語チャンポンは大人もします

子どもは話し始めると、たくさんの間違いをしながら学んでいきます。モノリンガルでもバイリンガルでもトライアル&エラー無くして成長はありません。子どもが小さいうちは、間違いも温かい目で見守ってあげられるかもしれませんが、言葉を流暢に話すことができるようになって言葉を混合し出すと、だんだんと不安になってきたりします。

バイリンガルの言葉の混合は言語学者の間でも注目されており、『コードスイッチング(Code-Switching)』や『コードミキシング(Code-Mixing)』と呼ばれています。コードミキシングはまだ言語を完全に習得していない子どもが言葉を混ぜて話すときに使うと定義されることもありますが、言語学者の間でもコードスイッチングとコードミキシングを同義語として扱う人も多いようなので、ここではあえて、言葉を混ぜて話すことをコードスイッチングとひとまとめにして呼びたいと思います。更に細かく分類すると、一つの文の中でスイッチが起こっているものを『文中コードスイッチング』、一つの文に続く次の文が別の言語になっている場合を『文間コードスイッチング』と呼びます。

例:
「ママー!このpoem、rimaなんだよ!」→ 文中コードスイッチング
「What did you say?もう一回言ってくれる?」→ 文間コードスイッチング

コードスイッチングは子どもだけではありません。バイリンガルなら誰でもしてしまいます。あなたにも心当たりはありませんか?私なんて毎日です。主人との会話は基本英語ですが、私のイタリア語が上達するにつれて、イタリア語がポコポコ入ってきます。それに、英語のネイティブではないので(英語圏で長期生活したことはありません)、気持ちを表現するとなると、日々耳にするイタリア語の方がしっくり来ることも多いです。イタリアに住む日本人同士でも「今日、suocera(義母)と出かけるねん」と言ったりします。義母のことはsuoceraと言わないと存在感が伝わりません。イタリア人の義母をお持ちの方になら共感してもらえるでしょうか。笑。

言葉を混ぜることは普通です

一昔前までは、コードスイッチングは不完全なバイリンガルのすることだとしてマイナスだと思われていたようですが、最近の研究では、コードスイッチングは2言語の習得過程において、極めてポジティブで普通の現象だと言われています。注目していただきたいのは、バイリンガルのコードスイッチングは、文の構成が正しいと言うことです。上記の「ママー!このpoem、rimaなんだよ!」と言う娘の発言を例にとってみても、日本語の文の構成としては正解です。日本語の基本を理解しているからこそ作れた文章です。つまり、バイリンガルである証拠でもあります。ただ、娘の場合は、私が「今日、suocera(義母)と出かけるねん」と義母をわざとイタリア語で言うコードスイッチングと異なり、明らかにボキャブラリーが不足しているために起こっています。娘が日本語を学ぶのはほぼ私とに限られています。これまで『詩』や『韻を踏む』なんて言う親子会話は皆無ですから、知らなくて当然です。また、家庭内でコードスイッチをしていると、子どももコードスイッチをしやすくなるそうです。(あーーー。反省!)

とりあえず、娘はバイリンガルとして着実に前進していることは分かりました。でも、コードスイッチングは放っておいても良いものなのでしょうか?

言葉をミックスしすぎたら回避策も準備しよう

コードスイッチング自体は問題ではありません。しかし、ある専門家は言います。コードスイッチングが頻繁に発生すると、第2言語に触れる量と質に影響が出てしまいます前の投稿で述べましたが、バイリンガルを目指すには二つの言語に触れる量と質の割合が均等であることが望ましいです。コードスイッチングを許容していたら、正しい第2言語を学ぶ機会を逃してしまいます。ですので、頻繁なコードスイッチングには手を差し伸べてあげる必要があると言います。子どものコードスイッチングに詳しいLanza, E.(1997)は子どもがコードスイッチングをしたときの、親の対応と言語能力の向上を研究しました。そして、親の対応を次の5つに分類しています。

1. 分からない振りをして、子どもに第2言語を使って説明させる。
2. 第1言語で子どもの言おうとしていることを推測して言ってあげる。
3. 子どもの言ったことを第1言語に翻訳して言う。
4. 分かった振りをして次の会話に進む。
5. 親もコードスイッチして会話をする(子どもの望む言語で話す)。

では、この中で最も子どもの第二言語能力の向上に貢献したのはどの対応だったと思いますか?

答えは『1』です。理由は、親が一つの言語で話すことを徹底するほど、その言語の能力がアップするからです。もちろん、OPOLを取り入れていたとしても、それぞれの家庭で徹底レベルは異なるでしょう。それによりコードスイッチングの頻度も変わってくると思います。ただ、できる限り言葉をミックスしないように促してあげることが大切です。

まとめ

  • 言葉を混ぜるのは子どもだけの現象ではなく、バイリンガルなら誰しもやりうる。
  • 言葉を混ぜて話すことは普通であって、むしろ両言語の文構造を理解しているからこそできること。強いて言えば、コミュニケーション能力がある証
  • ただし、子どもがあまりに言葉を混ぜすぎたままにしておくと、それ以上第2言語の成長を望めない恐れがあるため、別の言葉で説明したり回避策が必要

いかがでしたか?ポイントが分かってくるとバイリンガル子育ては楽しいですよ!