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バイリンガルのアイデンティティ【サードカルチャーキッズ】

バイリンガルキッズ

前回、バイリンガルの子どもは多かれ少なかれアイデンティティの揺らぎを経験するというお話をしました。

主人の母国イタリアでバイリンガル子育てをする我が家ですが、世界に目を向けるともっとグローバルな環境で子育てをされている方がたくさんいます。

両親の母国ではない国で育った世界を股にかける子どもを『サードカルチャーキッズ』と呼ぶそうです。そう言った子どもたちは、母国と言う認識がなく、国境を超えたアイデンティティを持っていると言われています。

あなたのお子さんに母国はありますか?

本記事では、サードカルチャーキッズについて詳しく掘り下げると共に、親の心構えを書き留めたいと思います。

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国境を超えたアイデンティティ

サードカルチャーキッズとは?

サードカルチャーキッズとは、どのような子どものことを言うのでしょう?

サードカルチャーキッズに関して詳しく書かれた本によると、
第三文化の子ども(サードカルチャーキッズ=TCK)とは発達段階のかなりの年数を両親の属する文化圏の外で過ごした子どものことである。TCKはあらゆる文化と関係を結ぶが、どの文化も完全に自分のものではない。
出典:「サードカルチャーキッズ 多文化の間で生きる子どもたち」デビッド・C.ポロック/ルース=ヴァン・リーケン(著)
と定義されています。

つまり、パパの母国でもママの母国でもない別の国で、成長期の大半を過ごした子どものことを指します。

両親の国が第一文化、住んでいる国の文化を第二文化とすると、その狭間で両親の文化にも現地の文化にも属さない文化を第三文化と呼び、その中で生活する子どもたちがサードカルチャーキッズと呼ばれます。インターナショナルスクールに通う駐在員の子どもと言えば分かりやすいかもしれませんね。

ちなみに、サードカルチャーキッズが大人になると、アダルトサードカルチャーキッズと呼ばれるそうです。オバマ前大統領は幼年期をインドネシアで過ごし、アダルトサードカルチャーキッズとして有名です。

最近では、駐在員でなくとも、フリーランスやノマドワーカーなど働き方が多様化し、国に縛られずに収入を得ることができるので、サードカルチャーキッズは増えてきています。

以前に訪問した、バリ島のグリーンスクールは、まさにサードカルチャーキッズの集まりだなと思いました。

サードカルチャーキッズの強み

サードカルチャーキッズ(TCK)に関する面白い調査がありました。

Denizenが2011年に200人のTCKにアンケートを行ったところ、ほとんどの人が大学の学位を持っており、うち30%は修士号を持っていたそうです。また、85%の人は2カ国語以上話せ、社会的にも就職に有利だということでした。

1960年代にTCKという言葉を最初に使い始めた、社会学者のルース=ヴァン・リーケンも、TCKは、2言語以上話せ、世界に対する視野が広く、文化意識が高いと言っています。

サードカルチャーキッズ 多文化の間で生きる子どもたち」の中で、TCKは次のようなベネフィットがあると書かれています。

☑︎ 視野が広い
☑︎ 困難な状況に直面したとき、立ち直る力がある
☑︎ コミュニケーション能力が高い
☑︎ 異文化経験が豊か
☑︎ 適応性がある
☑︎ 輪に溶け込むことができる
☑︎ 自立している
☑︎ 異文化能力がある
☑︎ 観察力がある
☑︎ 他人の気持ちを理解できる
☑︎ バイリンガル/マルチリンガルである
☑︎ 深い人間関係を築ける
☑︎ 友達が多い
☑︎ 精神的成長が早い
☑︎ 教育の機会が多い
TCKは、多様な文化や価値観との共存が求められる現代社会で、不可欠なスキルが養われると言っても過言ではないですね。

TCKと心のケア

あらゆる場所に属しているけど、どこにも属していないTCK

サードカルチャーキッズ(TCK)は、よく根無し草と表現されたりします。

パスポートで定義された国はあれど、その国で生活したことはなく、今住んでいる国もいつまでいるか分からない。不安定さが伴うサードカルチャーキッズは、根を張る土地が存在しない故に、あらゆる場所に属しているけど、どこにも属していないという葛藤に悩まされるということが指摘されています。

住んでいる土地にアイデンティティを築くというより、同じ集団にいる人の中にアイデンティティを見出す傾向があります。

順応性は高いけれど、その土地に根を下ろしている人たちと同じ感覚は得られず、疎外感を感じてしまったり、大切な友人と別れた悲しみからなかなか立ち直れなかったり、TCKはメリットが多い反面、直面する心の問題は軽くはありません。

近年では、TCKに関する研究が進み、都市圏のインターナショナルスクールなどでは転入や転校時に、心のケアを含め、カウンセリングに力を入れている学校が増えています。

もし、海外転勤が決まったら、転校先の学校がしっかりケアをしてくれるかを事前に調べておくといいかもしれませんね。一日の大半を過ごす学校に理解者がいれば、うまく環境に馴染めるよう手を差し伸べてくれることでしょう。

親は子どものよりどころ

TCKもハーフもそしておそらく転勤族の子も、海外であれ、国内であれ、複数の文化の間を行き来する子どもたちに共通すること。それは、単一文化の中で育った子どもたちよりも自分の立場が不確実ということではないでしょうか?

その不確実性に臆することなく向き合え、チャレンジできるようになるにはどうすれば良いのでしょう。

脳科学者、茂木健一郎氏の記事にとても説得力のあることが書いてありました。

– 自信の源は、心のよりどころとなる安全基地を作ること。
– 安全基地が自己肯定感を育み、不確実を楽しむ気持ちを作る。
– 安心・安全な環境にいると感じているかどうかでチャレンジできるかが決まる。
-子どもの安全基地は家族、特に母親である。
ついつい先にできないことを指摘しがちですが(特にアジア人は教育に厳しいですからね)、親が一番の理解者に徹することが、何よりも健全な成長に必要なことなんだろうなと胸を打たれました。

まとめ

グローバル化が進めば進むほど、子どもたちの可能性は広がりますが、同時にチャレンジしなければならない壁も高くなるでしょう。

文化の狭間を生きるサードカルチャーキッズはこれからも増え続け、グローバルな考え方を発信してくれると思います。

世界を股にかける子どもたちが不安を恐れずチャレンジし続けられるよう、親は「安心・安全」を提供してあげたいものですね。